雑学

太りにくい食事のヒントは痩せホルモンにあった!GLP-1から考える賢い食べ方

太りにくい食事のヒントは痩せホルモンにあった!GLP-1から考える賢い食べ方
「お正月に食べすぎちゃったな」「そろそろダイエットしなきゃ」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そんな太りやすい時期や新年の健康意識に注目したいのが、「GLP-1(ジーエルピーワン)」という痩せホルモンの一種です。実はこのGLP-1、食欲や血糖の調整に関わっていて、太りにくい食事法にも応用されています。元々は医療現場で糖尿病患者さんの食事療法などに取り入れられるようになって注目度が高まりましたが、実は日常の食生活にも取り入れやすい知識です。
この記事では、薬学の視点からGLP-1のしくみと、今日からできる食事の食べ方のコツをご紹介します。

目次

 

GLP-1ってなに?食欲と血糖を整える痩せホルモン

GLP-1の働きの図解

 

GLP-1は、小腸で分泌される消化管ホルモンの一種で、以下の作用があります。

 

①血糖値の上昇を抑えるダブルの働きがある

インスリンの分泌を促す一方で、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑えることで、血糖値の上昇を抑えます。

②胃から小腸へ移動するスピードをゆっくりにする

食べたものが胃から小腸へ排出される時間を遅らせ、食後の血糖値上昇を緩やかにします。

③食欲を抑える

脳の摂食中枢(食欲をつかさどる場所)に作用し、食欲を抑制する効果があります。

④体重管理にも役立つ

①~③の作用により、体重を減少させる効果があります。

 

GLP-1はどんなしくみで働くの?

GLP-1は食事をすると小腸から分泌され、すい臓・胃・脳などへ作用して「血糖の働き」をまとめて調整するホルモンです。その中でも、特に大きな役割が食後の血糖値を上げすぎないようコントロールすること。

食べ物が腸に入るとGLP-1が分泌され、

・すい臓には「インスリンを出して血糖値を上げすぎないようにして!」

・胃には「動きをゆっくりにして、血糖値の急上昇を防いで!」

・脳には「そろそろ満腹だよ」

と、食べ過ぎを防ぐための指令を出して血糖値が乱れないように全体を調整します。

つまりGLP-1は、食後の血糖値の上昇をやわらげるブレーキ役になっています。

 

では、その血糖値と肥満はどう関係しているのでしょうか。

血糖値が上がりやすい人は、体が血糖値を何とか下げようと働くため、すい臓からのインスリン分泌量が多くなります。インスリンには「脂肪をつくる」作用があるため、インスリン分泌の旺盛な人ほど太りやすい傾向にあると言われ、注意が必要です。

 

 

太りにくい「食べ方」の基本、血糖値の急上昇を防ぐには?

食べる順番

 

血糖値の急激な上昇を防ぐには、以下の方法がおすすめです。

 

  • 食べる順番を意識する

同じ食事内容であっても食べる順番によって血糖値の上がり方が異なります。
野菜を最初に食べ、炭水化物(ご飯やパン)を最後に食べるだけで糖質の吸収が緩やかに抑えられ、血糖値の変動が30%減少したとの報告もあります[1] [2]。

  • 野菜ジュース(果糖成分の少ない)で血糖値をコントロール

トマトジュースなどの野菜ジュースに含まれる食物繊維は、糖質や脂質の消化吸収をゆっくりにする働きがあります。
炭水化物を食べる前に摂取すると、野菜を食べた時と同じような血糖上昇を抑える効果が認められています。

 

さらに、GLP-1の作用を食事に応用する方法もお伝えします。

食事の順番として、

①野菜を最初に食べ、その後にタンパク質と炭水化物を一緒に摂る

②野菜とタンパク質を最初に食べ、その後に炭水化物を摂る

③炭水化物を最初に食べ、その後に野菜とタンパク質を一緒に摂る

①から③までを比較した場合、②の野菜とタンパク質を最初に食べた場合が最も食後の血糖値の上昇が低く、①の野菜を最初に食べた場合と比較して血糖値の変動パターンがほぼ同等であったとの報告があります。

これは、タンパク質(肉・魚)を炭水化物の前に摂ることで、GLP-1の分泌が促進され、速やかにインスリンが分泌されたこと、また胃の内容物が小腸へ排出される時間が遅くなったことで血糖値の上昇が抑えられたことがあげられます[3]。

 

GLP-1が働くと、食後すぐにインスリンの分泌が促され、短時間で血糖値を下げることができます。これにより、通常の食事で起こりがちな“だらだらと続く高血糖状態”を防げるため、長時間にわたってインスリンを出し続ける必要がなくなります。その結果、1日のトータルのインスリン分泌量はむしろ節約され、太りにくさにもつながります。さらに、GLP-1の作用により動脈硬化のリスクが抑えられ、脳梗塞や心筋梗塞の予防にも寄与するとされています[4] [5]。

 

 

 

 

食べるタイミングと習慣で変わる太りやすさ

食べるタイミングと習慣で変わる太りやすさ

 

「甘いものを食べるなら、いつ食べるのが正解?」と思ったことはありませんか。

 

  • スイーツは「3時頃」がベスト

スイーツを昼食直後、間食(昼食と夕食の間)、夕食直後で比較したところ、夕食直後に食べたときの血糖値が最も高くなり、昼食と夕食の間に摂取すると血糖値のピークと血糖変動が最も低かったと報告されています。昔から言われている「3時のおやつ」がベストな時間帯なのかもしれません。

 

「噛む回数」「食事速度」がGLP-1にも影響する

「よく噛んで食べなさい」と言われたことはありませんか。

これには医学的な根拠があります。咀嚼(そしゃく)の刺激は満腹感を引き起こし、食事誘発性熱産生(消化の際に発生する熱のこと)や脂肪燃焼効果が増強されると報告されています。この作用は、一口30~40回程度の咀嚼回数で効果が上がり、ゆっくり食べる習慣の人は肥満や糖尿病の頻度が低い傾向にあります[6]。

また、早食いの人ほど食物繊維の摂取量が少なく、満腹になるまでに適正カロリー以上のエネルギーを摂取してしまう傾向にあり、肥満になりやすいと報告されています[7]。

咀嚼の刺激は、満腹感や脂肪燃焼のアップだけでなくGLP-1、コレシストキニン、レプチンの食欲を抑えるホルモンの分泌を助け、グレリンの食欲増進効果を抑えることが報告されています。

 

三角食べは本当にいいの?

かつて昭和の時代では、「三角食べ(おかず・ご飯・汁物を交互に食べること)」が良いとされていましたが、最近の研究では少し違う見方が出ています。

野菜→タンパク質→炭水化物の順番でゆっくり食べるときと、野菜・タンパク質・炭水化物を交互に食べる三角食べの場合を比べると、三角食べの方が血糖の変動幅とピーク値が有意に高かったとの報告があります。血糖値の上昇による体の影響を考えた場合、食べる順番を少し考えて食事をした方が良さそうです。

 

 

食事内容のヒント:健康と相性の良い「地中海料理」

健康と相性の良い「地中海食」

 

地中海料理とは、南イタリアやギリシャなど地中海沿いの地域で昔から食べられてきた、伝統的な食事スタイルのことです。
新鮮な野菜、豆類、全粒粉のパンやパスタ、ナッツ類、果物を多く、肉類を少なく、不飽和脂肪酸であるオレイン酸を含むオリーブオイルをふんだんに使うのが特徴です。

この地域の諸国では、他の国や地域に比べ心臓病や2型糖尿病の発症が少ないことが知られており、「健康的な食事」として世界中で人気があります。

 

 

食事だけじゃない!体重管理に役立つ生活習慣

食事だけじゃない!体重管理に役立つ生活習慣

 

  • 朝食をしっかり摂ると痩せやすい

食事をすると、体は消化や吸収のためにエネルギーを使います。この時に産生される食事誘発性熱産生は、昼や夕より朝がいちばん高いと言われています。そのため総エネルギーに占める朝食の割合が高い人ほど痩せやすくなります。即ち、朝食を摂る習慣のない人、夕食の遅い人、また夜食を食べることの多い人ほど肥満になりやすくなります。

  • 睡眠は「食欲ホルモン」に直結する

睡眠の長さは食欲と深く関係しています。睡眠時間の短い人は食欲を増進させるグレリンと呼ばれるホルモンが増加し、食欲を抑えるレプチンが抑制されやすくなります。夜勤明けに食欲が増すのはこれらの作用が関係しているからです[8]。

寝るのが遅い人は、1日の摂取カロリーに占める夕食のエネルギー割合が高くなり、21時以降に摂取するカロリーが多くなると報告されています[9]。
夜更かしの多い人はカロリーの摂り過ぎに気を付けましょう。

 

 

ホルモンを味方に、ちょっとした習慣で体は変わる

ホルモンを味方に、ちょっとした習慣で体は変わる

 

GLP-1をはじめとした体の働きは、食べ方や生活リズムとしっかりつながっています。

血糖値が上がりにくい食べ方を意識すること、朝食をしっかり食べること、そして十分な睡眠をとること。どれも特別なテクニックではないけれど、こうしたちょっとした習慣が、GLP-1の働きを引き出し、太りにくい体づくりを後押ししてくれます。

 

今日からできることをひとつだけでも始めてみませんか?

そんな小さな積み重ねだけでも、体はちゃんと応えてくれます。

 

 

参考・引用について

[1] Diabet Med 2013,30(3),370-372

[2] J Clin Biochem Nutr. 2014,54(1),7-11

[3] Diabetes Obes Metab,2019,21(2),377-381

[4] Diabetes Care.2010,33(6),1389-1394

[5] Diabetes Obes Metab,2019,21(2),377-378

[6] Br J Nutr 2013.110(2),384-390.

[7] Int J Obes Relat Metab Disord.2003,27(11),1405-1410.

[8] Ann Intern Med.2004,141(11),846-850.

[9] Obesity 2011,19(7),1374-1381

 

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この記事を書いた人

  • 西村 英尚
    西村 英尚 にしむら ひでなお
    所属:
    薬学部 薬学科
    学位:
    博士(医学)
    専門分野:
    代謝学、医療系薬学

    私の研究は、糖尿病を中心とした内分泌・代謝疾患に関するものです。これまでに、2型糖尿病の発症に関わる遺伝子や、インスリン注射によって生じる皮下硬結、さらには高齢の方における糖尿病治療や薬の使い方について研究してきました。最近では、転倒や転落と関連する睡眠薬の使い方や、せん妄を発症した入院患者さんへの薬物療法にも関心を持ち、取り組んでいます。日々の臨床で感じる課題を出発点に、少しでも患者さんの生活の質向上につながるような研究を進めていきたいと考えています。

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