目次
魔女の宅急便キキの「腕」に注目

2001年に発売された『魔女の宅急便』DVDのパッケージには、主人公のキキがホウキにまたがって空を飛び、キキの前方で黒猫ジジがずり落ちそうになりながらつかまっている様子が描かれています。
ここで描かれているキキの前腕(肘からすぐ下の部分)は、非常に太く描かれています。このときはまだ、キキはホウキの乗り方が上手ではなかったがために、腕に力が入っていると思われます。一方、同じシーンを描き直したのであろう1998年にアメリカで発売されたVHSのパッケージでは、腕が細く描かれています。アメリカ人にしてみれば「魔法で飛んでんだから力はいらないでしょうよ。ましてや主人公の腕を太く描くなんて」といったところかもしれません。いずれにしても、手で「握る」あるいは「手首を動かす」ための筋肉の多くは、肘の部分についています。力を入れると肘の周りが膨らみますが、手首から先はほとんど「腱」しかないので太さはあまり変わりません。
そこで今回は、3つのポイントに分けて見ていきます。
- 手を動かすための筋肉の位置はどこにあるのか
- 野球肘、テニス肘と筋肉の関係
- 足の筋肉はどうなっているのか
手を動かすための筋肉は、どこについている?

手は手首を中心に回転させることができますが、解剖学的には手のひらが「前」、手の甲が「後ろ」ということになっています(以前、講義が終了してすぐ『先生、手のひらってどっち側ですか』と訊いてきた学生がいたので、一応断っておくと、手相のある側が手のひらです。「掌」とも書きます)したがって、小指側が「内側」であり、親指側が「外側」ということになります。手首を「曲げる」ためのいくつかの筋肉「屈筋群(くっきんぐん)」は、主に肘の内側に付いています。筋肉のふくらみ「肉」の部分は肘から手首、すなわち「前腕」の肘寄り半分のところについており、そこから形の変わらない「腱」が手首まで伸びています。反対に手首を伸ばす、手の甲側に曲げるいくつかの筋肉は「伸筋群(しんきんぐん)」と呼ばれ、主に肘の外側についています。そのため、手首を曲げたり伸ばしたり、あるいは指を曲げたり伸ばしたりすると肘の下辺りが太くなったり、細くなったりしますが、手首の太さはあまり変わらないのです。
野球肘・テニス肘と筋肉の関係
野球のピッチャー、特に投球回数が非常に多かったり、変化球を多用するピッチャーは、この「屈筋群」に多大な負荷をかけています。
力を入れるだけで筋肉は損傷します。傷が治っていく過程で筋肉が太くなり、筋力アップしていくのですが、傷ついていることに変わりはありません。そのため、ピッチャーには肘の内側を痛める人が出てきます。これがいわゆる「野球肘」です。
逆に、テニスプレーヤーで特にバックハンドを多用する選手は「伸筋群」に負荷がかかるため、肘の外側を痛めることが多くなります。これが「テニス肘」です。
野球肘が進行した際に行われる、肘関節内側の損傷した靭帯を修復する手術が「トミー・ジョン手術」と言われる手術です。自身の前腕や膝の腱をとってきて、損傷した靭帯のかわりに縫い付けるという手術のようです。メジャーリーガーの大谷翔平選手がこの手術を行ったあと、ピッチャーとして登板はできませんでしたが、バッターとしてホームラン王になりました。この事実からもピッチャーの肘には、他の野手、バッターよりも非常に過大な負荷がかかっているものと想像できます。
足の筋肉はどうなっているのか

人間は二足歩行という、非常に不自然な姿勢で生活しているので、手足を「上肢(腕)」「下肢(足)」として区別していますが、四つ足であれば「前肢」「後肢」であって、似たような機能を持っています。実は、人間も手足の筋・骨は基本的には似たような構造を持っています。足首を動かす筋肉の「肉」の部分は膝のすぐ下についていて、足首にはありません。つまり、足首の細い人は、余分な脂肪がついていないということになるのです。
キキの姿勢からわかる「力の入り方」

魔女の宅急便の冒頭、先輩魔女と並んで飛んでいるシーンをみると、先輩の腕は細く、足も垂らして飛んでいるため、手足とも力が入っていないことがわかります。一方で、キキの腕は太く、膝も曲げているので、上肢・下肢ともに力が入っていることがわかります。魔法がかかっているのはホウキそのものであって、乗りこなすには技術や「慣れ」が必要なのでしょう。
しかし、そうであるなら飛行船から落ちていくトンボ君を片手でつかみ、もう一方の手でホウキにぶらさがるという芸当は本当に可能なのか・・・?
続きは、岐阜医療科学大学で。
