本記事では、活動を通して見えてきた、地域への理解が看護の質向上につながることや、若者が地域への関心を深め将来の関わり方を学ぶ機会となる点を紹介します。
さらに、大学と地域が協働する意義についてもお話しします。
目次
まち歩きから始まる、新しい学び『関なかサーチ』
「このまち、どうしたらもっと良くなるだろう?」そんな問いから始まった取り組みがあります。
それが岐阜県関市で行われている地域ワークショップ「関なかサーチ」です。大学教員や学生、高校生が一緒にまちを歩き、地域の魅力や課題を見つけ、未来への提案を考えるこの活動は、一見すると私の専門とする看護とは遠い世界のように思えるかもしれません。
しかし実は、これからの看護にとって欠かせない視点が詰まっています。

まち歩きをしている様子
看護と「地域」はどうつながるのか

近年、看護師の働き方は大きく広がり、病院だけでなく地域で活躍する場面が増えています。私自身も臨床や訪問看護の経験を経て大学教員となる中で、その可能性を感じると共に「地域と一緒に何かできないか」と考えるようになりました。
そこから地域活動に関わり始め、出会ったのがこの「関なかサーチ」です。
歩いて気づく、まちの課題と魅力

みんなで気づきやアイディアを模造紙にまとめました
この活動では、参加者が実際にまちを歩きながら気づきを共有します。
1年目のテーマは「one small step ~できたらいいな♪こんな関(まち)~」。
普段は車で通り過ぎるだけの道も歩いてみると、見え方は大きく変わります。
・店の場所が分かりにくい
・シャッターが閉まったままの店舗が多い
・歩道が狭く段差が多い
そんな不便さに気づく一方で、人の温かさや地域の魅力にも触れることができることに気づきました。そこから、誰もが分かりやすい案内マップや外国語表記、空きスペースの活用、さらには住民の声を書き込める場づくりなど、高校生や大学生の若い感性ならではのアイデアが次々と生まれました。

まとめた資料
医療とまちをつなぐ新しい発想
2年目にはさらに視点を広げ「街歩き×医療 innovation~MaaSでつながるSekiのまち~」をテーマに、医療MaaS(移動診療車両)※の活用を考えました。
車社会である関市の特性を踏まえ、どこに停車すれば人の目に留まりやすいか、どうすれば地域に浸透するかを考えました。
そこから、ピクトグラムを使った分かりやすい看板の設置や運行ルートの工夫、SNSでの情報発信など、実現可能な提案へとつながりました。
さらに活動後には、高校生からの働きかけで学校での医療MaaS出張説明会や総合探究の授業発表も実現し、関なかサーチでの学びが地域に広がっていくのを感じました。

医療MaaS メディモGIFU
※医療Maas(Mobility as a Service)とは?
医療機器や通信機器を搭載した車両で、人口減少や医師不足などにより医療機関が減少している地域や、自力で病院に行くことが困難な高齢者などへ医療を提供することが可能となり、地域医療を支える新たな仕組みとして注目されています。

発表の様子
「まちを知ること」は看護の質を高める、高校生におきた変化
こうした経験を通して看護学科の教員として実感したのは、「まちを知ること」は看護の質を高めるということです。
療養者が安心して暮らし続けるためには、その人が生活する地域の環境や文化、課題を理解することが不可欠です。地域ごとに異なるニーズに応じた支援を考える力は、これからの看護にますます求められていくと感じました。
また、参加した高校生の変化も印象的でした。最初は受け身だった生徒が、まち歩きを重ねるうちに「自分たちの地域ってすごい」と目を輝かせるようになりました。日常の風景に新たな意味を見出し、自分のまちに誇りを持つような気づきは、将来への選択や地域への関わり方にも影響を与えていくと感じました。また大学生との交流も含め、世代を超えた学びの場として関なかサーチは大きな価値を持っていると感じました。

最後はグループで記念撮影
地域とともに育つ学び-協働が生み出す未来

大学は地域の中にあり、地域に支えられて存在しています。だからこそ地域との関係は一方向ではなく、「協働」であることが重要です。
互いに学び合い、高め合いながら信頼関係を築いていく、そして学生たちが将来、専門職として地域に羽ばたくとき、安心して送り出せる土台をつくること、それが教員の役割の一つだと私は考えています。
「関なかサーチ」は、まちを歩くというシンプルな活動の中に、多くの学びと可能性を秘めていました。そして看護、教育、地域づくり、それぞれが交差するこの取り組みは、これからの社会に必要なヒントを私たちに投げかけてくれる重要な活動となりました。
みなさんもまずは「まち歩き」から始めてみませんか?