宇宙へ行ったサバ缶から考える食の未来
サバ缶が浮いて宇宙に到達したのか。サバだから泳いでいったとか。そんなわけない。サバの缶詰が宇宙食として認定されるまでの努力を描いたドラマだ。(だろうと思う)
月9ドラマである。かつて月9といえば休み明け初日、仕事に疲れた方々、特におねえさま方に向けた恋愛ドラマの王道というイメージであった。
しかし今回は高校生、漁業、そして宇宙である。ドラマ的になにかしら恋愛っぽい要素も入ってくるのかもしれないが、本筋ではない。
ストーリー展開が速く、しかも高校と宇宙機構のドラマが同時進行するので、連続ドラマなのに理解するのにすんごい疲れる。そして毎回泣かされる。
筆者は宇宙医学に関わっているので、これを機に【宇宙食】と【宇宙での食事】について、自由気ままにお話したいと思うので、是非お付き合いいただきたい。
目次
宇宙での味覚は地上とはちょっと違う?

宇宙では味の濃い食事が好まれるという。
日本のカレーライスが外国人宇宙飛行士にも人気だということだ(ここでいう「外国人」とは「日本人以外の国籍」という意味である。宇宙にはできるだけ国境を持ち込みたくないが、れっきとした文化・思想の違いはあるわけで、食事も例外ではない)。
なぜ、味の濃い食事が好まれるのか。
宇宙では、地上に比べて味がわかりにくいからである。では、「なぜわかりにくくなるのか。」
一説によると鼻が詰まるからである。
宇宙へ行くと重力がなくなる。人類は日常的に立位、座位で日中は仕事に、勉強に励んでいる。
すると、重力は頭から足方向、体の縦方向にかかることになる為、足先に向かって血圧が高くなる。
特に静脈は壁が非常に薄いので、血圧がかかると膨らんでしまう。
手の甲の血管を眺めてもらうとよくわかる。
手を下に向けていると血管(静脈)が膨れてはっきり見えるようになるが,頭の上の方に上げていくと見えなくなる。これは血圧が下がるからである。
同じことが体内でも起きている。足の静脈が膨らみ、血液が溜まることで心臓へ帰る血液が少なくなっているのである。
これが同じ哺乳類でもイヌやライオンのように四足歩行なら、ヒトでいう「前後方向」にのみ、重力がかかってくるので頭と足でそれほど血圧は変わらない。
宇宙へ行くと、重力による血圧差がなくなり、寝ているのと同じ状態がずーっと続く。
すると頭に常に血が上っているような感じになり、鼻の静脈が普段より膨らむ。結果的に鼻が詰まってしまうのである。
鼻が詰まってしまうと匂いがわからなくなる。匂いがわからないと味もわかりにくくなるので、濃い料理が好まれるのではないかと言われている。
かつて某番組内で人気企画であった、鼻を塞いだ状態で料理名を当てる『シンクロナイズドテ〇スティング』は、
まさに匂いがわからないと味もわからなくなる実証であった。

ちなみに岐阜医療科学大学では、頭を6度だけ下向けて寝たまま生活をしてもらうという、無重力状態を模擬する実験を行っている。
宇宙医学分野ではスタンダードな実験方法なのだが、謝礼がかなりかかるのと、参加者のお世話、対処方法を知っていないとできないので、この10年間、世界中で実施できたのはフランスにあるヨーロッパ宇宙機構の施設と岐阜医療科学大学だけである。
そういった意味で岐阜医療科学大学は宇宙医学の世界最先端を走っている。
宇宙食同様に、飛行機の国際線にて提供される機内食も比較的濃い味付けになっている。
飛行機の中は、通常時よりも気圧が低くなっているので、口や鼻の粘膜から水分が蒸発しやすくなる。
加えて湿度が10〜20%前後、場合によっては5%程度になるため「鼻が乾く」のである。
結果的に宇宙とは異なる理由で味がわかりづらくなり、濃い味付けになっていると思われる。
宇宙での食事

現在、国際宇宙ステーション(ISS)ではグリニッジ天文台の世界標準時を基に、1日3回食事を摂っている。宇宙飛行士全員が集まって食事するのである。
ISS内部は無重力なのでプカプカと食事が浮いてしまう。
また、水分は浮いて機器にくっつくと表面張力で広がり、べったりとくっついてしまう。
すると当然、機器に支障をきたすので、水分の多いメニューはゼリー状になっている。
ISS内部にコンビニやスーパーはないので、地球から食料を持っていかなくてはならない。
大昔の宇宙食は、歯磨き粉のようなペースト状のものだったこともあると聞いたことがあるが、
現在のメニューの多くはフリーズドライされたものをお湯でもどす、あるいはレトルトか缶詰であることが主流である。
仕切りのついたスーツケースのような温熱器に食事を入れて、温めて食べることもできるようになった。
ちなみに電子レンジは置いていない。電子レンジが発する電磁波(マイクロウェーブ)が実験機器や通信機器に影響を与えるかららしい。
月面開発時代の宇宙食

先日、「アルテミス2」号に乗って人類が54年ぶりに月へ行った。
月面着陸したわけではないが、今の技術でヒトが行って帰ってこれることを証明してくれた。
周回のみで10日間のミッションであったが、今後着陸し基地で生活するようになると、多くの食料が必要となる。
また、宇宙観光が発達し、多くの観光客が訪れるようになると、食料のみを積んだロケットを打ち上げる必要も出てくるかもしれない。
現地で食料を生産すべく、植物を水と光で栽培する「植物工場」や、小さな細胞・組織を培養し、増やして使う「培養肉」の研究も進められている。
月面にはISSと違って地上の6分の1とはいえ重力が存在するので、スープやみそ汁といった水モノもそのまま食べられるようになるかもしれない。
尿を再度「水」にして飲む装置はすでにISSで実用化されている。岐阜医療科学大学主催で行った公開講座では、金井宇宙飛行士から「昨日のコーヒーは今日のコーヒー」という名言を教わった。そのうち大便も再利用されるだろう。「昨日のカレーは今日のカレー」。想像すればするほどおいしくなさそうである。
現在ISSにお酒の類は持ち込み不可となっているが、観光資源として月面に向かうとなると、個人的には酒類を持ち込みたい。
重力が少ないと頭部への血流が増えて酔いやすくなるのだろうか。やはり実験してみないと。
そして最後に残る疑問。
「サバ缶」に出てくる女子高生たちはどうしてしっかり化粧しているのだろうか。食品を扱う学校なのに・・・。
続きは岐阜医療科学大学で。