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若い世代にも広がる糖尿病予備軍――いま知っておきたい予防と向き合い方

若い世代にも広がる糖尿病予備軍――いま知っておきたい予防と向き合い方
「糖尿病患者は依然として増加傾向にある」というニュースを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。特に30〜40代では、健診結果を確認しても受診を控えて治療につながらないケースも多いといわれています。糖尿病は、食事や運動など日々の生活習慣と深く関わっており、体の中では血糖やインスリンの働きが大きく影響しています。本記事では、糖尿病が増えている理由をひも解きながら、薬や生活習慣の視点から、無理なく続けられる予防のヒントを紹介します。

目次

 

「糖尿病は中年以降の病気」はもう古い?

 

厚生労働省の令和6年「国民健康・栄養調査」1)によると、糖尿病が強く疑われる20歳以上の男女は約1100万人と推計されています。糖尿病というと「中年以降の病気」というイメージを持つ人も少なくありませんが、糖尿病予備軍は、10代後半から30代の働き世代や子育て世代にも広がっています。健康診断で「血糖値がやや高め」と指摘されても、「まだ最初から薬で治療の必要はありません」と言われると安心してしまい、医療機関の受診や生活習慣の見直しを後回しにする人も多いでしょう。しかし、この“まだ大丈夫”という状態が長く続くことで、将来の健康に少しずつ影響が及ぶ可能性があります。

 

 

血糖値が上がるのはなぜ?糖尿病のしくみを知ろう

 

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高い状態が続く病気です。血糖値を調節しているのは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンです。食事をすると血糖値は上昇しますが、インスリンの働きによって糖は細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。しかし、食べ過ぎや運動不足、肥満、睡眠不足、強いストレスなどの生活習慣が重なると、インスリンの働きが弱くなったり、分泌量が不足したりします。

 

その結果、血糖値が下がりにくい状態となり、これが糖尿病予備軍の段階です。厄介なのは、糖尿病になっても初期にはほとんど自覚症状がないことです。のどの渇き、頻尿、疲れやすさ、体重減少といった症状が現れる頃には、すでに病気が進行していることもあります。だからこそ、健康診断で示される血糖値やHbA1cは、体からの重要なサインとして受け止めることが大切です。

 

 

あなたは大丈夫?糖尿病予備軍になりやすい人の特徴

 

糖尿病予備軍になりやすい人にはいくつかの特徴があります。

・家族に糖尿病の人がいる

・内臓脂肪が多い

・甘い飲み物や間食が多い

・運動習慣が少ない

・夜更かしが多い

 

といった生活習慣が代表的です。特に20〜40代は、仕事や育児に忙しく、自分の健康管理が後回しになりがちな世代です。コンビニ食や外食に頼る機会が増え、運動の時間も少なく、休日は疲れて休むだけという生活が続くと、知らないうちに血糖値が上がりやすい体質へと変化してしまいます。

 

 

今日からできる!糖尿病予防の小さな習慣

 

しかし、糖尿病予備軍の段階であれば、生活習慣の改善によって十分に改善が期待できます。

 

食事では極端な制限をする必要はなく、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を心がけることが基本です。野菜や海藻、きのこ類など食物繊維の多い食品を先に食べる「食べる順番」を意識することも、血糖値の急激な上昇を抑える工夫になります。また、甘い飲み物を水やお茶に替えるだけでも、日常的な糖質摂取量を減らすことができます。

 

運動についても、特別なトレーニングを行う必要はありません。通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使う、子どもと一緒に体を動かすなど、日常生活の中で活動量を増やすことが重要です。筋肉は血糖を取り込む大切な組織であり、体をこまめに動かすことでインスリンの働きが改善すると考えられています。

さらに、睡眠やストレス管理も血糖コントロールに大きく関係します。睡眠不足が続くとホルモンバランスが乱れ、血糖値が上昇しやすくなります。寝る前のスマートフォン使用を控え、規則正しい生活リズムを整えることも、糖尿病予防の大切な習慣です。

 

 

糖尿病になったら薬を使う?知っておきたい治療の選択肢

 

それでも生活習慣の改善だけでは血糖値が十分に改善しない場合や、すでに糖尿病と診断された場合には、薬物療法が行われます。糖尿病治療薬にはさまざまな種類があり、膵臓からのインスリン分泌を促す薬、食後の血糖上昇を緩やかにする薬、肝臓からの過剰な糖の放出(食後に増えすぎたブドウ糖を肝臓が“グリコーゲン”という形に変えて蓄え、必要なときに放出して血糖値を保つ仕組み)や糖の産生(糖以外の乳酸・アミノ酸・グリセロールから新しくブドウ糖を作る働き)を抑えてインスリンの働きを高める薬などがあります。

 

近年では、尿中に糖を排出させる薬や、食欲を抑えながらインスリン分泌を促す注射薬も登場し、体重減少や心臓・腎臓を守る効果も期待されています。さらに必要に応じてインスリンを用いることもあり、早期にインスリン注射を導入することで膵臓の負担を軽減し、合併症の予防につながる場合もあります。

 

 

「まだ若いから大丈夫」にしない、未来の健康のために

 

糖尿病を長期間放置すると、心疾患や脳卒中、腎臓病、視力障害、神経障害などの合併症を引き起こす可能性があります。

しかし、糖尿病予備軍や糖尿病の初期段階であれば、生活習慣の見直しや適切な治療によって改善を目指すことができます。健康診断の数値は不安になるためのものではなく、将来の健康を守るための大切なヒントです。「まだ若いから」「忙しいから」と後回しにするのではなく、日々の小さな習慣を少しずつ見直すことが、10年後の自分や家族の健康につながります。自分の体の変化に耳を傾け、必要に応じて医療の力も借りながら、無理のない形で健康管理を続けていくことが大切です。

 

参考・引用元

1) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66279.html

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この記事を書いた人

  • 西村 英尚
    西村 英尚 にしむら ひでなお
    所属:
    薬学部 薬学科
    学位:
    博士(医学)
    専門分野:
    代謝学、医療系薬学

    私の研究は、糖尿病を中心とした内分泌・代謝疾患に関するものです。これまでに、2型糖尿病の発症に関わる遺伝子や、インスリン注射によって生じる皮下硬結、さらには高齢の方における糖尿病治療や薬の使い方について研究してきました。最近では、転倒や転落と関連する睡眠薬の使い方や、せん妄を発症した入院患者さんへの薬物療法にも関心を持ち、取り組んでいます。日々の臨床で感じる課題を出発点に、少しでも患者さんの生活の質向上につながるような研究を進めていきたいと考えています。

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