速報から飛躍:新規レスベラトロール八量体の発見と構造原理を解明 ― 伊藤哲朗教授らの研究が「Tetrahedron」に掲載 ―
本学薬学部 生薬学・漢方薬学分野の伊藤哲朗教授が中心となって進めた研究成果が、英国のElsevier社が刊行する国際学術誌「Tetrahedron」に掲載されました。
Tetrahedronは1957年創刊の歴史ある有機化学分野の学術誌で、世界中の研究者による重要な研究成果を掲載してきた国際的なジャーナルです。
論文タイトル:
Octameric Resveratrol Oligomers from Vatica albiramis: Structural Elucidation, Stereochemical Framework, and Photochemical Diversification.
掲載論文リンク先 (現在In Press, Journal Pre-proof:校正前・今後正式にフル原稿の掲載):
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0040402026001870
本研究は、先に速報(Rapid Communication)として報告された成果を発展させたものであり、その後の詳細な検討により、新たな化合物の発見とともに、より深い構造および生合成の理解に到達したものです。
本研究では、フタバガキ科植物 Vatica albiramis から、レスベラトロール八量体である vateriaphenol A、vaticanol Q に加え、新規化合物 vaticanol R を見出し、その極めて複雑な立体構造を明らかにしました。
構造解析には、高分解能質量分析(HRMS)、多次元NMR(VT-NMR、HMBC、NOESY/ROESY)、円二色性(CD)解析に加え、micro電子回折(microED)および放射光X線結晶構造解析を組み合わせました。これにより、これまで解析が困難であった巨大分子の立体構造を精密に決定することに成功しました。
特に本研究では、分子を「四量体(building block)」の組み合わせとして捉えることで、八量体が「4+4構造」として構築されることを明らかにしました。さらに、深谷匡准教授の発案による光反応実験により、紫外線照射によってこれらの化合物が相互に変換されることを示し、天然物が光化学反応によって多様化することを実験的に証明しました。
この成果は、単なる構造決定にとどまらず、「どのようにして天然物の複雑な構造が生み出されるのか」という生合成の理解にも踏み込んだものであり、天然有機化学における重要な知見を提供するものです。
また、生物活性評価では、vateriaphenol A がインフルエンザウイルスやノロウイルス代替ウイルスなどに対して顕著な殺ウイルス活性を示すことが確認されており、これらの天然化合物が新たな医薬シーズとなる可能性も示されています。
本研究は、東京大学、分子科学研究所、筑波大学、東北大学、中部大学などとの共同研究として実施されました。
今回の成果は、速報として発表された研究をさらに深化させ、詳細な検証と新規発見を加えた「フルペーパー(Regular Article)」としてまとめられたものであり、天然物化学分野における構造解析と生合成理解の双方に新たな展開をもたらすものです。
https://link.springer.com/article/10.1007/s11418-025-01986-4
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