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薬学部 伊藤哲朗教授研究グループが廃材ラワンから感染症対策に役立つ成分を発見しました

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岐阜医療科学大学薬学部 伊藤哲朗教授らの研究グループは、建築資材や家具材として広く利用される「ラワン材(※)」の心材から、強いウイルス不活化(感染力をなくすこと)作用を持つポリフェノール成分(レスベラトロールの重合体)を発見し、その精密な構造解析に成功しました。
この成果は、2025年9月に仙台で開催された第67回天然有機化合物討論会で発表され、未利用の木材を感染症対策に役立てる取り組みとして注目を集めています。

 

※ラワン材:東南アジア産フタバガキ科の木材。日本でも建築や家具によく使われます。

 

○研究の背景
フタバガキ科植物の多くはラワン材として利用されていますが、その加工の過程で大量の端材が発生し、十分に有効利用されていないのが現状です。一方で、フタバガキ科植物は多様なポリフェノールを生産し、その中でもレスベラトロール誘導体は高い生理機能を有することが知られています。そこで本研究では、これまで未利用材として扱われてきたラワン材に注目し、有用成分の探索を行いました。

 

○研究の内容と成果
・未利用木材からの有用成分探索
ラワン材の乾燥材部から有機溶媒抽出と多段階クロマト分離を行い、主要ポリフェノール成分としてレスベラトロールの重合体を単離しました。
・精密構造解析
低温NMR測定、先進技術である電子線/放射光結晶構造解析を組み合わせ、分子の立体構造と特徴的な骨格を明らかにしました。
・ウイルス不活化作用の確認
得られたレスベラトロール重合体は、インフルエンザウイルス、ネコカリシウイルス、ムンプスウイルスなどのエンベロープウイルスを短時間で不活化し、感染性を大幅に低下させました。この特性は、消毒液や外用薬などへの応用が期待されます。

 

○研究チーム
この研究は、岐阜医療科学大学、公益財団法人微生物化学研究会 微生物化学研究所、中部大学、東京大学大学院工学系研究科、自然科学研究機構 分子科学研究所、筑波大学 生命環境系/TARAセンター、東北大学 多元物質科学研究所 先端計測開発センター、岐阜薬科大学の共同研究として実施されました。

 

○社会的意義
本成果は、これまで廃棄されてきたラワン材の端材から、感染症対策に資するウイルス不活化成分を発見したことで、木材資源の高付加価値化と衛生分野への展開を両立させ、環境負荷の低減と公衆衛生の向上に寄与する可能性があります。